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SFSS劇場『一度しか使えないタイムマシン、そして七人の黒電話』

よく考えたら、タイムマシン物のSFを書いたことが無かったので。
その日も大雨だった。当然のように雷も一緒だ。
フランケンシュタイン博士の時代から決まっていることだが、世紀の大発明の日には雷雨と決まっているのだ。
豪雨の中、外からゼロ博士と助手の一之瀬青年が研究所へと戻って来た。雨水の混じった歓喜の涙が壁や床を汚すが、そんなことは気にしない。
机の上に“それ”は有った。

ゼロ「遂に完成したぞ!」
一之瀬「やりましたね、博士!」


毛のように生えたコードは神成るエネルギー、稲妻の1,21ジゴワットの電流を伝える大動脈。
電気を蓄積することで完成したその機械、その名は。

ゼロ&一之瀬『タイムマシンだぁああ!』

タイムマシン、説明が必要だろうか? それこそHGウェルズが生まれる前に時間旅行しない限り、説明する必要もない。

一之瀬「まず、どうしますか!? クレオパトラですか、地球の最後ですか、スポーツ年鑑ですか!?」
ゼロ「落ち着くのだ一之瀬君。これはまだ不完全な物…そして、バッテリーが持たないからな、行って帰るだけで次の充電には時間が掛かる」


リサイクルショップから買ってきた黒電話をダイヤルするゼロ博士。

ゼロ「最初の一回の使い方は決まっておる。ピッポッパっと…おお、不二子か? ふははは! 驚け不二子! 今日という今日はお前も儂の元へ戻ってくるじゃろう!」

会話の内容に一之瀬はゲンナリしていた。相手は不二子女史。ゼロ博士の四〇歳年下の元妻。
なんてことはない。天才博士が莫迦女に引っかかった挙句に捨てられた。天才と莫迦は紙一重というか、そういうコトだ。
その女を見返すためにタイムマシンを使おうとしている、というわけだ。
受話器を置いたゼロ博士の顔には、成功を果たして性交で果てるも間近と行った充実感が浮かんでいる。
そのときだった。雷鳴にレーザー銃の銃声が重なった。

一之瀬「恨んでくれていいですよ、博士」
銃声は一之瀬が撃ったレーザーガンだった。
一之瀬はレーザーで黒焦げになって誰か分からない死体を引きずり、地下室に続く階段に投げ込んだ。
そして、ゼロ博士がリサイクルショップから買ってきた黒電話をダイヤルする一之瀬。

一之瀬「ピッポッパっと…三宮博士ですか? ゼロ博士を始末しました」

相手は三宮博士。ゼロ博士がタイムマシンを開発しているという情報を手に入れ、一之瀬をスパイとして送り込んだ張本人。
なんてことはない。凡才発明家が凡人を使って発明を奪い取ろうとしたのだ。平々凡々な欲望というか、そういうコトだ。
受話器を置いた一之瀬の顔には、任務の秀良な終了をした充実感が浮かんでいる。
そのときだった。雷鳴にレーザー銃の銃声が重なった。

不二子「恨んでくれていいわよ、ゼロ」

銃声は窓から侵入した不二子が誰かも確認せずに撃ったレーザーガンだった。
不二子は黒焦げになって顔も分からない死体を引きずる。
地下室に続く階段に投げ込もうとしたが、そこは本物のゼロの死体が引っかかって開かない。仕方なく台所の冷蔵庫に押し込んだ。
そして、ゼロ博士がリサイクルショップから買ってきた黒電話をダイヤルする不二子。

不二子「ピッポッパっと…四釜センセ? ちょっと聞きたいんだけど…」

相手は小説家の四釜。今の不二子の愛人だ。
なんてことはない。考えることを知らない女が、考えることしかしない男に確認している、そういうコトだ。
タイムマシンを手に入れれば設けられると思った不二子だが、結局の所どうすれば現金が手に入るのかすら分からないのだ。
受話器を置いた不二子の顔には、小悪な女が男心を掌握している充実感が浮かんでいる。
そのときだった。雷鳴にレーザー銃の銃声が重なった。

三宮「恨んでくれて構わんよ、一之瀬くん」

銃声は窓から侵入した三宮が誰かも確認せずに撃ったレーザーガンだった。
三宮は黒焦げになって顔も分からない死体を引きずる。
地下室に続く階段に投げ込もうとしたが、そこは黒焦げ死体が引っかかって開かない。
台所の冷蔵庫に押し込もうとするが、そこには本物の一之瀬が詰まっている。
仕方なく、風呂場の浴槽に転がしておいた。
そして、ゼロ博士がリサイクルショップから買ってきた黒電話をダイヤルする三宮。

三宮「ピッポッパっと…五条くんか? 特ダネだ。タイムマシンを完成させた」

相手はマスコミの五条。大手出版社のデスクリーダーだ。
なんてことはない。噂になりたい男が噂作る以外に何もできない男に助けを求めている。そういうコトだ。
自分がタイムマシンを作ったと発表し、名声を得るのだ。
受話器を置いた三宮の顔には、名誉欲から来る現確なまでの幻覚に充実感が浮かんでいる。
そのときだった。雷鳴にレーザー銃の銃声が重なった。

四釜「う、う、う、恨んでくれて構わなよ、不二子さん」

銃声は窓から侵入した四釜が誰かも確認せずに撃ったレーザーガンだった。
四釜は黒焦げになって顔も分からない死体を引きずる。
地下室に続く階段に投げ込もうとしたが、そこは黒焦げ死体が引っかかって開かない
台所の冷蔵庫に押し込もうとするが、そこには真っ黒の物体がすでに入っている。
風呂場の浴槽に転がそうとしたが、そこには本物の不二子が入っている。
仕方なく、天井裏の影に押し込む。
そして、ゼロ博士がリサイクルショップから買ってきた黒電話をダイヤルする四釜。


四釜「ピッポッパっと…六橋さん? 恐竜を見に行けるよ…」


相手はハンターの六橋。
なんてことはない。夢の物語を描く男が現実的な戦闘力を持っている男を誘った。そういうコトだ。
自分だけでは恐竜を見ても生きてはいられない。恐竜への対抗策を持っている人間が必要だった。
小説家になるほど空想好きな男は、何よりも恐竜や未知の物体が見てみたかった。
受話器を置いた四釜の顔には、恐竜を見られるという間隙なき感激から生まれる充実感が浮かんでいる。
そのときだった。雷鳴にレーザー銃の銃声が重なった。

五条「恨んでくれて構わないっすよ、三宮博士」

銃声は窓から侵入した五条が誰かも確認せずに撃ったレーザーガンだった。
五条は黒焦げになって顔も分からない死体を引きずる。
地下室に続く階段に投げ込もうとしたが、そこは黒焦げ死体が引っかかって開かない
台所の冷蔵庫に押し込もうとするが、そこには真っ黒の物体がすでに入っている。
風呂場の浴槽に転がそうとしたが、そこには本物の三宮が入っている。
天井裏の影にも真っ黒の物体があり、仕方なく研究所の机の下に押し込む。


五条「ピッポッパっと…七ヶ宿さん…ってアレ? なんだよ、この雨で回線が切れたか?」

相手は七ヶ宿と言う男。なんてことはない。古い電話だから何度も使っている内に寿命で壊れた。そういうコトだ。
受話器を置いた五条の顔には、不純な動機から来る動悸を抑えらず、充実感が全く浮かんでいなかった。
そのときだった。雷鳴にレーザー銃の銃声が重なった。

六橋「恨んでくれ、四釜さん」

銃声は窓から侵入した六橋が誰かも確認せずに撃ったレーザーガンだった。
六橋は黒焦げになって顔も分からない死体を引きずる。
地下室に続く階段に投げ込もうとしたが、そこは黒焦げ死体が引っかかって開かない
それだけでなく、台所の冷蔵庫、風呂場の浴槽、天井裏の影、研究所の机の下にまで黒い消し炭が入っており、どこにも片付けられない。

六橋「どうなってるんだ? 黒いゴミばかり…て、まさか、このゴミは…」


今までの誰も気づかなかったことにハンターである六橋は気が付いた。
これは死体だ。この黒い五つの物体は自分が四釜(本当は五条)を焼き殺したのと同じように、誰かが誰かを殺した死体なのだ。
これはどういうことだ? タイムマシンがあると話を聞き、自分のハンターらしいワイルドな顔貌に沿う願望を叶えたかっただけだというのに、なぜ連続的な殺人事件が起きているのか?
響く雷鳴に、六橋は情けなく悲鳴を上げた。得体のしれない何かが起こっていることだけは間違いない。
もしかしたらタイムマシンが別の時間から怪物を呼び出したのではないか? それとも完成されたのが実はタイムマシンなどではなかったのではないか?
居てもたっても居られず、ゼロ博士がリサイクルショップから買ってきた黒電話をダイヤルする六橋。


六橋「繋がらない、繋がらない、なんでだ! さっき四釜はこの電話から掛けていたはずだ!」


雨樋の中を雨水が溢れかえる。その音を聞いて雨水と同じペースで焦燥が六橋の心から溢れかえる。
自分は殺人を犯したが、その報いを受けようというのか? 何かがこの建物の中に居るのか? それは何か?
思わず走り出した六橋は、何人も出入りしたせいで濡れている床に滑り――そして、誰のかは分からないが…一之瀬か不二子か三宮か四釜か五条の誰かが置きっ放しにしていたレーザー銃の上に転倒し、そのまま暴発し…彼の肉体は黒焦げになった。
そして誰も居なくなった…ように思われたとき、地下室から部屋の中にひとりの男が入って来た。


無限「なんつーか、どういう仕組みなのやら…」


銀ピカのスーツに身を包んだ大男。
彼の名前は無限ダイ。
五万年の未来からやってきた時間旅行者で、先ほどのイナズマで乗って来たタイムマシンが壊れてしまい、途方に暮れていた。
偶然、雨宿りのつもりで研究所に忍び込み、地下室に隠れており、顛末を一から十まで…というか、ゼロから六までしっかり見てしまった。


無限「なんでタイムマシンが五万年先まで実用化しなかったのか、やっとわかったよ」


偶然やって来た時間旅行者が、偶然こんなタイムマシンのハプニングに遭遇するとはすごい偶然だった…が。
そもそも、それは珍しいことなのだろうか?
時間旅行者は無限の未来から無限の人数がやって来ているはずであり、そしてタイムマシンも無限とはいかないが、同じような経緯で何度も発明されては闇に消えて来ていた。
無限はそんなことを感じつつ、机の上のタイムマシンに手を伸ばし、電源を入れた。無限の物よりも原始的だが、使い方は同じだった。


無限「じゃあね、このタイムマシンは…五万年後まで借りておくよ」


現場には、ただ壊れた黒電話だけが残されていた。
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ママチャリ日本一周するために仕事を辞める変人。
特撮・古マンガ好きの若いのに懐古という変人です。

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