【クウガ】MISSING MEMORYS【ガメラ】~懸命~【ティガ】
魔竜・ダグバが吼えた。
吼えただけである。文字通り、ただそれだけで音の波は衝撃となり、衝撃は風となり、風は破壊力となってリントの集落を襲った。
リントたちは目を覚まして叫び惑い、阿鼻叫喚。
そんな人々の間をすり抜けるようにして、ひとりの男が歩いてきた。ラ・ドルド・グ。
「ゲゲルのルールを伝える。クウガ、お前は…これを使って戦え」
石で出来た卵の様な物体。後にイリスと呼称される怪物の封じられたタマゴ。
クウガはそれを視認したとき、意味も同時に悟った。
これは闇の力に匹敵する黒い力、ダグバの魔竜に対抗できる力ではあるが、人間が使ってはいけない力。
「お前は黒のクウガとなってダグバと戦うことを拒否した。ゲゲルはこの朱雀を用いて行われる」
「使わない、俺は…こんなものは…!」
「では、この世界は…闇へと沈む。ダグバの手によって」
魔竜ダグバの周りをギャオスが王を称える従者のように飛び回る。
滅びと破壊とが合わさり、混沌とした現実としてそこにたたずんでいた。
同刻。
白い外套の男はとある海岸に居た。
魔竜ダグバの覚醒を感じ取り、懐から取り出した何かの取っ手のような物体=スパークレンスを見つめる。
スパークレンスは白く煌めいていたが、今、彼には器が無い。石像として封印されている肉体がないのだ。
「久しぶりだな、私を覚えているか?」
「…神出鬼没、とはお前のことだな。バルバ」
海岸に現れたのは、簡素な素材で作られた貫頭衣を纏いながらも高貴な雰囲気をたたずませる美女。
グロンギ、ラ・バルバ・デ。白い外套の男とは旧知の仲である。
「ダグバはもう止まらない。この世界が闇に沈むまで…いや、闇に沈んだとしても、止まりはしないだろう」
「それがお前の目的なのか? あいつとの…戦いは何のために有ったというのだ?」
アイツ、という言葉にバルバが怪訝な表情をした。
このとき、外套の男は、バルバが魔石ゲブロンに侵食され、記憶を失っていることに思い当たった。
「ギジェラにも負けなかったお前が…っく…」
「何を云っているか分からないが…このゲゲル、お前の出番はない。肉体を失った光の巨人なんぞ…アマダムをリントに渡す程度のことしかできはしない」
「違う! 私たち光の巨人も…リントも…光であることを忘れはしない! 闇に堕ちることがあろうとも、必ず日は登る!」
男は外套を脱ぎ払った。現れたその姿は人間ではなかった。硬質で隆起した眼球、彫像のように動かない銀の皮膚、胸には光を失った宝玉を携えている。その姿は後に発見されるティガの巨人と全く同じだった。
いや、胸の宝玉は光を失っていない。奥底から吹き上がるように輝き、全身を光に包み…いや、光そのものに変えていった。
「なにをするつもりだ…?」
「この下の海は墓場だ。光の器となりえなかった不完全な玄武たちの…今、私自身を光にする。そうすれば…一時的に蘇らせることはできるはずだ」
「リントたちを救うために、その身を光にして消えようというのか。お前も変わった男だな」
「光は消えない。放たれた光は宇宙(そら)の果てで神話となり、新たな光になる」
海底からひとつの岩塊が浮かび上がる。
楕円形の島のような物体は、男に呼応するように、何かを取り戻そうように、全体に力が漲っていく。
再びリントの集落。
「行くぞ! ゴウラム!」
クウガはゴウラムに掴まり、空中へと飛び出した。
「うおりゃああああああ!」
裂帛の気合いと共に、炎の飛び蹴りを放つクウガ。
目標はもちろん魔竜ダグバだが、覆うように飛び回るギャオスに遮られた。
衝撃はギャオスの全身を駆け巡り、ギャオスを地上へと落とし、クウガを反転して空中へと戻した。
巨大化しきっていないギャオスならば、十二分に赤の封印力でも対応できる。
そのとき、仲間が封印されたことに驚いたのか、ギャオスたちが鳴いた。
その鳴き声は超音波となってクウガに降り注いだ。躱しきれない、そうクウガが判断した時、ゴウラムがその射線に割って入ってきた。
「ゴウラム!」
笛のような音を断末魔に残し、ゴウラムは切断され、石の塊として地面に叩きつけられる。
気に留める時間は無いが、仮にクウガの攻撃がダグバに当たっていたとしても、それが果たして痛手となりえるのか?
なったとしても倒すために一体何回の攻撃を必要とするのか?
それほどの封印力を放って自分の体は持つのか?
その間に必ずダグバの反撃が来るだろうがそれは防げるものなのか?
戦っているその間にこのリントの集落は破壊しつくされてしまうのではないか?
無数の不安がよぎる。闇の力に頼りたくなる。闇の力や朱雀を使えば魔竜を打ち滅ぼせるのではないかと思う自分が居る。
しかし、仮に倒せたとしても闇に堕ちたクウガはリントたちを虐げるだろう。
ならば選ぶ道は決まっている。
何回邪魔されても、何回受け止められても、何回でも自分は炎の飛び蹴りに渾身の力を込め、この魔竜を打ち砕く。心だけは折らせはしない。
刹那にクウガが覚悟を決めたとき、飛来した光。
海から正に光の速さで現れた、不完全な玄武の器。器の放つ言葉は、あの白い外套の男の声と全く同じものだった。
【クウガ、決戦のときだ。この玄武を…ガメラを頼む】
「…ガメラ?」
【この器は、地球そのものの生命・マナで動くことが出来るが、ガメラを何体も動かすほどの力が地球にはない。
お前のアマダムは勾玉を兼ねている。お前の光が…ガメラの光となる!】
そのとき、クウガは確かに聞いた。遥か遠くからのような、とても近くからの様な、奇妙な獣の咆哮を。
笑顔を守りたいと。全ての命のために戦うことが、自分が眠り続けた意味であるとクウガの心に響いた。
【行くぞ、クウガ!】
「身体を借りるをガメラ!」
“ギャッ・リャァーアッ アアアッ アアアアッッ!!”
クウガは湖に沈むように光に飲み込まれていく。
最後に残った岩塊は手足と頭を伸ばした。
甲羅の中央に宝玉を煌めかせ、二本の角を備えた大いなる獣。立つ。
吼えただけである。文字通り、ただそれだけで音の波は衝撃となり、衝撃は風となり、風は破壊力となってリントの集落を襲った。
リントたちは目を覚まして叫び惑い、阿鼻叫喚。
そんな人々の間をすり抜けるようにして、ひとりの男が歩いてきた。ラ・ドルド・グ。
「ゲゲルのルールを伝える。クウガ、お前は…これを使って戦え」
石で出来た卵の様な物体。後にイリスと呼称される怪物の封じられたタマゴ。
クウガはそれを視認したとき、意味も同時に悟った。
これは闇の力に匹敵する黒い力、ダグバの魔竜に対抗できる力ではあるが、人間が使ってはいけない力。
「お前は黒のクウガとなってダグバと戦うことを拒否した。ゲゲルはこの朱雀を用いて行われる」
「使わない、俺は…こんなものは…!」
「では、この世界は…闇へと沈む。ダグバの手によって」
魔竜ダグバの周りをギャオスが王を称える従者のように飛び回る。
滅びと破壊とが合わさり、混沌とした現実としてそこにたたずんでいた。
同刻。
白い外套の男はとある海岸に居た。
魔竜ダグバの覚醒を感じ取り、懐から取り出した何かの取っ手のような物体=スパークレンスを見つめる。
スパークレンスは白く煌めいていたが、今、彼には器が無い。石像として封印されている肉体がないのだ。
「久しぶりだな、私を覚えているか?」
「…神出鬼没、とはお前のことだな。バルバ」
海岸に現れたのは、簡素な素材で作られた貫頭衣を纏いながらも高貴な雰囲気をたたずませる美女。
グロンギ、ラ・バルバ・デ。白い外套の男とは旧知の仲である。
「ダグバはもう止まらない。この世界が闇に沈むまで…いや、闇に沈んだとしても、止まりはしないだろう」
「それがお前の目的なのか? あいつとの…戦いは何のために有ったというのだ?」
アイツ、という言葉にバルバが怪訝な表情をした。
このとき、外套の男は、バルバが魔石ゲブロンに侵食され、記憶を失っていることに思い当たった。
「ギジェラにも負けなかったお前が…っく…」
「何を云っているか分からないが…このゲゲル、お前の出番はない。肉体を失った光の巨人なんぞ…アマダムをリントに渡す程度のことしかできはしない」
「違う! 私たち光の巨人も…リントも…光であることを忘れはしない! 闇に堕ちることがあろうとも、必ず日は登る!」
男は外套を脱ぎ払った。現れたその姿は人間ではなかった。硬質で隆起した眼球、彫像のように動かない銀の皮膚、胸には光を失った宝玉を携えている。その姿は後に発見されるティガの巨人と全く同じだった。
いや、胸の宝玉は光を失っていない。奥底から吹き上がるように輝き、全身を光に包み…いや、光そのものに変えていった。
「なにをするつもりだ…?」
「この下の海は墓場だ。光の器となりえなかった不完全な玄武たちの…今、私自身を光にする。そうすれば…一時的に蘇らせることはできるはずだ」
「リントたちを救うために、その身を光にして消えようというのか。お前も変わった男だな」
「光は消えない。放たれた光は宇宙(そら)の果てで神話となり、新たな光になる」
海底からひとつの岩塊が浮かび上がる。
楕円形の島のような物体は、男に呼応するように、何かを取り戻そうように、全体に力が漲っていく。
再びリントの集落。
「行くぞ! ゴウラム!」
クウガはゴウラムに掴まり、空中へと飛び出した。
「うおりゃああああああ!」
裂帛の気合いと共に、炎の飛び蹴りを放つクウガ。
目標はもちろん魔竜ダグバだが、覆うように飛び回るギャオスに遮られた。
衝撃はギャオスの全身を駆け巡り、ギャオスを地上へと落とし、クウガを反転して空中へと戻した。
巨大化しきっていないギャオスならば、十二分に赤の封印力でも対応できる。
そのとき、仲間が封印されたことに驚いたのか、ギャオスたちが鳴いた。
その鳴き声は超音波となってクウガに降り注いだ。躱しきれない、そうクウガが判断した時、ゴウラムがその射線に割って入ってきた。
「ゴウラム!」
笛のような音を断末魔に残し、ゴウラムは切断され、石の塊として地面に叩きつけられる。
気に留める時間は無いが、仮にクウガの攻撃がダグバに当たっていたとしても、それが果たして痛手となりえるのか?
なったとしても倒すために一体何回の攻撃を必要とするのか?
それほどの封印力を放って自分の体は持つのか?
その間に必ずダグバの反撃が来るだろうがそれは防げるものなのか?
戦っているその間にこのリントの集落は破壊しつくされてしまうのではないか?
無数の不安がよぎる。闇の力に頼りたくなる。闇の力や朱雀を使えば魔竜を打ち滅ぼせるのではないかと思う自分が居る。
しかし、仮に倒せたとしても闇に堕ちたクウガはリントたちを虐げるだろう。
ならば選ぶ道は決まっている。
何回邪魔されても、何回受け止められても、何回でも自分は炎の飛び蹴りに渾身の力を込め、この魔竜を打ち砕く。心だけは折らせはしない。
刹那にクウガが覚悟を決めたとき、飛来した光。
海から正に光の速さで現れた、不完全な玄武の器。器の放つ言葉は、あの白い外套の男の声と全く同じものだった。
【クウガ、決戦のときだ。この玄武を…ガメラを頼む】
「…ガメラ?」
【この器は、地球そのものの生命・マナで動くことが出来るが、ガメラを何体も動かすほどの力が地球にはない。
お前のアマダムは勾玉を兼ねている。お前の光が…ガメラの光となる!】
そのとき、クウガは確かに聞いた。遥か遠くからのような、とても近くからの様な、奇妙な獣の咆哮を。
笑顔を守りたいと。全ての命のために戦うことが、自分が眠り続けた意味であるとクウガの心に響いた。
【行くぞ、クウガ!】
「身体を借りるをガメラ!」
“ギャッ・リャァーアッ アアアッ アアアアッッ!!”
クウガは湖に沈むように光に飲み込まれていく。
最後に残った岩塊は手足と頭を伸ばした。
甲羅の中央に宝玉を煌めかせ、二本の角を備えた大いなる獣。立つ。
- 関連記事
スポンサーサイト