更新を忘れてたぁああああ! 中聖子二話!
まあ、『なろう』の方で更新してたから見逃してくれぃ…。
二〇一七年一二月二九日
犯罪者とは『大人になり切れないヤツ』だと、米田刑事は考える。
犯罪者は不必要なプライドに踊らされ、自分自身を追い詰めて強迫観念に翻弄されて手を汚す。
今回の事件の謎を解くカギもそこに有ると確信していた。
誰でも諦められることを諦めることができず、可能であると信じ込んでしまった異端者こそが犯罪者への領域へ向かう。
大人とは身の程を知っている人間のことを指し、分別が出来る人間はそうそう犯罪に及ばない。ストッパーを持たない、あるいは他人とは全く別のシステムで動く大人になれずに卵の中で腐ってしまったモンスター。
それこそが警察官としての自分の敵であると、三〇歳を迎えてなお、正義と青春色の米田の主張は、揺らぐことはなかった。
そんな米田だが、現在、警察署のデスクトップパソコンに向かい合い、自分の身の程を思い知っていた。全くといっていいほど資料がまとまらないのだ。
苦手なパソコン、そして取り扱っている事件の異質さに自分では役者不足を痛感している。
事件は今から二日前、当直だった米田は徹夜明けの眠い目をこすり、窮屈なスーツを脱いでシャワーを浴びることだけを考えて自家用車を運転し、帰路についていた。
まだ三〇歳、されど三〇歳。以前に比べて徹夜明けを辛いと感じるようになる。そんなとき、車内に鳴り響く着信音。
学生時代は携帯なんて持ったことのないアナログ人間の米田であったが、流石に警察官が連絡不能に陥るのは困る、と渋々買ってから一度も買い替えていない骨董品のフィーチャーフォン。慌てず騒がず、路肩に留めてから通話ボタンを押す。
最初はてっきり、また忘れ物をしただの、仕事が片付いていないだの、小言でも云われるのかと米田は身構えたが、違った。
事件が起きたのは一二月二七日・七時一八分、電話が掛かってくる一時間半ほど前だ。
嶋田九朗という男が銃殺され、犯人は銃を持ったまま逃亡しており、探すのに参加しろという。
先ほどまでの眠気はどこへやら。米田の警察官魂に着いた火は、眠気すらも燃料にしてあかあかと燃え上がった。眠いと云っていられる事件ではない。銃を持った殺人犯が今も移動して市民を理不尽な危険へと引きずり込もうとしている。
身の丈に合わないことを犯罪者とするならば、自分にできることをするのが警察官の絶対の職務であると米田は確信する。
その犯人を捕らえた防犯カメラ映像を警察内の無線で回覧しているということだったため、米田は一も二も無く車を止め、交番に立ち寄った。
蹴破るように入って来た米田に、その交番の巡査は飛び起きるように…というか、飛び起きた。
こんな事件が起きているというのに寝ているとは何事か、すべきことをしろと明らかに年上の巡査に対して怒鳴り散らしたくなったが、そんなことをしている場合ではない。
米田は身分証を見せて事情を説明し、パソコンを起動させて映像を観る。
映像はまだ若い女のようだが、こんな凶悪事件をなぜ起こしたのか、捕まえて話を訊かなければと盛り上がる交番に入って来たのが須古冬美だった。
自分が犯した銃殺シーンに目を奪われ、今にも崩れてしまいそうな少女の表情を見て、米田の中の火は一挙に弱火になった。
今にも泣き出しそうな、逃げ出してしまいそうな、混乱したような様子。冬美は被疑者ではあったが、米田の中では確保ではなく、保護という形になった。
そう、映像が有るのだから状況的には犯人は須古冬美以外に考えられない。
普通に考えれば、この事件で調査すべきは犯人ではなく、行方不明になっている拳銃の行方と事件背景である。
しかし、須古冬美は“人格交換をしていた”と主張していた。
その相手は国木優という女性だが、彼女も事件の一週間前に死亡していることが調べるうちに分かり、しかも人格交換の履歴には確かにそのように明記されていた。
殺人事件なのは間違いないが、何を探せば良いのだ? と米田のキーボードを叩く指がまた止まった。
自分のすべきことは真実を突き止め、犯人にしかるべき裁きを与える場を作ることではある。
この事件に何かの影があるのは間違いがないが、その影が何から伸びている影なのか、そもそもその影を作り出している光がなんなのか。
謎の多すぎる事件に米田は携帯電話に登録されたひとつの古いデータに目を配る。
そのデータの女性は警察の人間ではない。自分の独断では彼女に協力を仰ぐことはできないと思いとどまった。
「中聖子(なかのせいし)…どうすりゃいいんだよ、俺は…」
須古冬美を犯人と断定できない報告書は、そうして提出された。
警察という身の丈では解決できない事件であると、気が付かないまま。
犯罪者とは『大人になり切れないヤツ』だと、米田刑事は考える。
犯罪者は不必要なプライドに踊らされ、自分自身を追い詰めて強迫観念に翻弄されて手を汚す。
今回の事件の謎を解くカギもそこに有ると確信していた。
誰でも諦められることを諦めることができず、可能であると信じ込んでしまった異端者こそが犯罪者への領域へ向かう。
大人とは身の程を知っている人間のことを指し、分別が出来る人間はそうそう犯罪に及ばない。ストッパーを持たない、あるいは他人とは全く別のシステムで動く大人になれずに卵の中で腐ってしまったモンスター。
それこそが警察官としての自分の敵であると、三〇歳を迎えてなお、正義と青春色の米田の主張は、揺らぐことはなかった。
そんな米田だが、現在、警察署のデスクトップパソコンに向かい合い、自分の身の程を思い知っていた。全くといっていいほど資料がまとまらないのだ。
苦手なパソコン、そして取り扱っている事件の異質さに自分では役者不足を痛感している。
事件は今から二日前、当直だった米田は徹夜明けの眠い目をこすり、窮屈なスーツを脱いでシャワーを浴びることだけを考えて自家用車を運転し、帰路についていた。
まだ三〇歳、されど三〇歳。以前に比べて徹夜明けを辛いと感じるようになる。そんなとき、車内に鳴り響く着信音。
学生時代は携帯なんて持ったことのないアナログ人間の米田であったが、流石に警察官が連絡不能に陥るのは困る、と渋々買ってから一度も買い替えていない骨董品のフィーチャーフォン。慌てず騒がず、路肩に留めてから通話ボタンを押す。
最初はてっきり、また忘れ物をしただの、仕事が片付いていないだの、小言でも云われるのかと米田は身構えたが、違った。
事件が起きたのは一二月二七日・七時一八分、電話が掛かってくる一時間半ほど前だ。
嶋田九朗という男が銃殺され、犯人は銃を持ったまま逃亡しており、探すのに参加しろという。
先ほどまでの眠気はどこへやら。米田の警察官魂に着いた火は、眠気すらも燃料にしてあかあかと燃え上がった。眠いと云っていられる事件ではない。銃を持った殺人犯が今も移動して市民を理不尽な危険へと引きずり込もうとしている。
身の丈に合わないことを犯罪者とするならば、自分にできることをするのが警察官の絶対の職務であると米田は確信する。
その犯人を捕らえた防犯カメラ映像を警察内の無線で回覧しているということだったため、米田は一も二も無く車を止め、交番に立ち寄った。
蹴破るように入って来た米田に、その交番の巡査は飛び起きるように…というか、飛び起きた。
こんな事件が起きているというのに寝ているとは何事か、すべきことをしろと明らかに年上の巡査に対して怒鳴り散らしたくなったが、そんなことをしている場合ではない。
米田は身分証を見せて事情を説明し、パソコンを起動させて映像を観る。
映像はまだ若い女のようだが、こんな凶悪事件をなぜ起こしたのか、捕まえて話を訊かなければと盛り上がる交番に入って来たのが須古冬美だった。
自分が犯した銃殺シーンに目を奪われ、今にも崩れてしまいそうな少女の表情を見て、米田の中の火は一挙に弱火になった。
今にも泣き出しそうな、逃げ出してしまいそうな、混乱したような様子。冬美は被疑者ではあったが、米田の中では確保ではなく、保護という形になった。
そう、映像が有るのだから状況的には犯人は須古冬美以外に考えられない。
普通に考えれば、この事件で調査すべきは犯人ではなく、行方不明になっている拳銃の行方と事件背景である。
しかし、須古冬美は“人格交換をしていた”と主張していた。
その相手は国木優という女性だが、彼女も事件の一週間前に死亡していることが調べるうちに分かり、しかも人格交換の履歴には確かにそのように明記されていた。
殺人事件なのは間違いないが、何を探せば良いのだ? と米田のキーボードを叩く指がまた止まった。
自分のすべきことは真実を突き止め、犯人にしかるべき裁きを与える場を作ることではある。
この事件に何かの影があるのは間違いがないが、その影が何から伸びている影なのか、そもそもその影を作り出している光がなんなのか。
謎の多すぎる事件に米田は携帯電話に登録されたひとつの古いデータに目を配る。
そのデータの女性は警察の人間ではない。自分の独断では彼女に協力を仰ぐことはできないと思いとどまった。
「中聖子(なかのせいし)…どうすりゃいいんだよ、俺は…」
須古冬美を犯人と断定できない報告書は、そうして提出された。
警察という身の丈では解決できない事件であると、気が付かないまま。
スポンサーサイト