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アドリブショートショート小説 お題 『クリスマス』

とりあえず、クリスマスで何もやらないのもアレなので。
考えながら書くパターンですが、いつも通り、絶賛から酷評まで大歓迎です。





 今日はクリスマスイヴだが、オレには関係ない。
 どんなに頼んでも仕事は休ませてもらえないし、寒いし、給料安いし、テレビで小田和正観てーのに。
 他のどーでもいい日には休日が貰えるのに、一番楽しい日には休日が貰えねー。
 っつーか、12月23日が休日っておかしくねーか?
 天皇様の誕生日ってのはわかるけどよォ、キリストを見習って24日に生まれろよなー。
 オレだってシャンパン飲んで、女房の作ったウサギ肉のシチュー食って寝たいんだよなぁ、ニンジンが星の形に切ってあるヤツ。

 「あ、あの…部長…その、着きました、タナカさんの家です」

 運転手の女の子がオドオドと云ったのを聞き、見下ろせば確かにそこは目的地、タナカアキラとタナカユウキ兄弟が住んでいる家だ。

 「ああ、サンキューね、サリーちゃん。もうルドルフより運転上手いんじゃねーの、オヤジ越えてるよ、マジで」

 前まではオレの運転手をやっていたのはこの娘の父親だったのだが、訪問先で用意されるケーキだのクッキーだのを食いまくり、糖尿病と通風と虫歯を併発して引退、去年から彼女が運転手をしてくれている。

 「あ、はい、ありがとうございます、部長」
 「じゃあさ、寒いだろうけどちょっと待っててよ、すぐに終わらせるからさァ」

 オレはソリから飛び降りて、タナカ兄弟の自宅の屋根に着地した。
 日本家屋は住むには良いが、オレたちには優しくはない。
 煙突もないし、屋根の上もどんどん歩きにくくなる。
 瓦の屋根にやっと慣れたと思ったら今度はソーラーパネルときた。その上を歩く人間のことを考えて欲しいものだ。
 オレは事前に調べていた兄弟の部屋の窓を目差し、ソーラーパネルを踏み割らないように慎重に歩き出した。
 窓の鍵が閉じていれば、特技の忍法・壁抜けの術を使うしかないが、このタナカ家に限っては鍵以前に半分開いていた。無用心っつーか、カゼでもひいたらどうするんだっつーの。
 窮屈な窓に足を掛け、オレは軽やかに忍者のように部屋に入ったが、やはり室内も外よりは暖かいがそこそこに冷えている。

 「…ああ、アキラとユウキって名前だからてっきりブラザーズかと思ったが…シスターズの方か」

 二段ベットに寝ていたのは女の子がふたり。
 なんでこう、日本の名前ってのは判り難いんだ? 男女も判らない名前なんて不便なだけじゃねーか。
 非合理的をワビサビだとか勘違いしてんじゃねーか。
 しかも冷えた室内なのに掛け布団を半分ふっ飛ばしている。 ふとんをふっとばすな、ってか。

 「…ん、なんだコレ」

 枕元に置いてあったのはクレヨンか何かで描いたんだろう、オレと自分たちを描いたらしい上手くもねえイラスト。
 下にはヘタクソなひらがなで、『えんとつなくてごめんなさい かえるときまどしめて』の文字。

 「…バカかオメーら、入れたいだけなら鍵を開けときゃいいだけだろーが。プレゼントの要望も書かねーで…」

 来たのにプレゼントをしないのもバカバカしいし、ふたりで分けられるようにたっぷりのキャンディーとチョコレートを置いていくことにした。
 バカなふたりのために、ハミガキも一緒に置いていってやる。ルドルフみてーに虫歯になったら痛い思いをするからな。

 「部長、なにか…良いことあったんですか?」
 「ん? なにが?」

 オレがソリに戻ると、サリーちゃんがそう云った。
 …もちろん、ソリに戻るときは姉妹に布団を掛けなおし、内側から窓とカーテンをビシッと閉め、壁抜けで出てきてやった。

 「部長今、すっごくニヤニヤしてます」

 給料安いしキツイが、この仕事は嫌いにならない自分が不思議だ。
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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ママチャリ日本一周するために仕事を辞める変人。
特撮・古マンガ好きの若いのに懐古という変人です。

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